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「しっかりしてください」とオレは夫妻に声をかけた。「今はサヤを探すことが先決です」
オレは時計を見た。サヤが出ていってから一時間が経過していた。 「奥さまは警察と小学校に電話して、家で待機してください。連絡係を頼みます。だんなさんはオレと一緒にサヤを探しましょう」 「・・・わかりました」 夫妻は目元を拭って立ち上がった。 工藤家を出ると、だんなと手分けしてサヤの捜索を開始した。オレが最も恐れていたのは「成城女子児童連れ去り未遂事件」の犯人とサヤが出くわしてしまうことだ。オレが犯人ではないかと目星をつけているキツネ目が出没した川沿いの道路へと急いだ。 オレは全力で走りつづけた。息が切れ、ニコチンで犯された肺が悲鳴をあげていた。それでもオレは走りつづけた。心の中で叫んでいた。サヤ、いま迎えにいくからな! 待ってろよ! それまでどうか無事でいてくれ! ブロック塀の角を曲がり、川沿いの道路に飛び出すと、ヘッドライトの強烈な光を浴びた。一台の車が走ってくる。見覚えのある車だった。グリーンの古くさい国産車。運転するキツネ目の姿が目に飛び込んできた。キツネ目は悪魔のような表情をしている。それからの光景はスローモーションのようにオレの目に映った。車がオレのすぐ横を走り抜ける。後部座席の窓から人影が現れ、サヤの青白い顔が浮かび上がった。サヤは微動だにせず、無表情でまっすぐ前を見すえている。まるで魂を抜かれてしまっているようだった。 「・・・サヤー!」 オレは絶叫して車を追いすがった。しかしあっという間に車は遠ざかり、交差点を曲がって見えなくなってしまった。くそったれ・・・!
by zyoh
| 2005-07-11 18:19
| 笑顔をなくした天使
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